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第19回 「化学と工業」中島裕美子主任研究員インタビュー

『常に笑顔で生き生きと』

【有機金属化学の研究スタート!】

-11.私は1996年に東京工業大学に入学し、4年次から有機金属化学を専門とする鈴木寛治先生の研究室に配属され、本格的な研究をスタートさせました。その年の研究室配属先の決定方法はじゃんけん(当時、結構一般的でした)と、不確定要素の高い状況の中、第1希望であった有機金属化学の研究室とは運命的な出会いを果たしたと言えます。とはいえ、その志望動機は「先生が優しくて研究室が楽しそう」という不純なものでした。したがって、研究を甘く考えていた私にとって、毎日研究室に行って実験をするという最低限の研究活動すら、初めは少々苦痛であったのを覚えています。

また、当時競技スキーチームに所属していた私は、昼間はトレーニングと称して水泳に行き、冬になると、女子トイレの掃除用具入れにスキー道具を忍ばせ、土曜日にはこっそりと早めに研究室を抜けてスキー場に向かうこともしばしばでした。このように、全く研究に身が入らない私に対し、指導教官である鈴木先生は、忍耐強く時間を掛けて様々な研究スキルを教えて下さいました。その結果、徐々にその気になった私は、遅咲きながら修士2年の冬に、博士課程に進学することを決意するに至りました。博士課程在籍中には、「これからの女性研究者は、より多くのスキルを2.-2身に着けるべし」という鈴木先生の勧めのもと、京都大学榊茂好教授に師事し、計算化学を学ぶ機会にも恵まれました。

このように、多くの諸先生および諸先輩方に支えられながら、はじめは研究に全く興味のなかった私も2005年に無事学位を取得することが出来ました。

 

【4つの研究場所にて】  

博士課程在籍中から、卒業後はいろいろな環境で研究をしてみたいと漠然と考えていた私は、学位取得後すぐにドイツへ渡り、アーヘン工科大学・奥田純先生の研究グループにて二年間、その後2007年からの一年間は、理化学研究所侯有機金属化学研究室にて、希土類金属化学の研究に従事しました。両研究室ともに、世界中から沢山の研究者が集まる、活気に満ちたグループであり、様々なバックグラウンドを持つ多種多様な研究者を見事にまとめ上げ、目標に向かって突き進む奥田・侯両先生のリーダーシップはとても印象的でした。

3-3.2008年からは、京都大学化学研究所小澤文幸先生の研究室で5年間助教を務め、3d金属錯体の化学に取り組みました。ここでは、小澤先生の圧倒的な知識量に毎日感銘を受けるとともに、先生の、頑として化学の原理追求に挑み続ける、研究に対する並々ならぬ熱意からは、研究者として大切な数々のことを再確認させられました。

このように、いずれの研究場所でも、新しい実験技術や学術的知識を吸収した以上に、分野の最前線に立つ様々な研究者と交流し、研究に対する姿勢や信念を感じ取れたことが、今の自分に大きく影響を与えていると実感しています。

2013年4月からは、4つ目の研究場所となる、産業技術総合研究所に異動し、今年ですでに三年目になります。本研究場所においても、さらなる飛躍を遂げるべく、もう一度自分のアンテナを広げ、なるべく多くの研究者の方々と交流しようと、本寄稿を機に気持ちを新たにした次第です。

【今後の目標】

4..最近、仕事のいろいろな場面において「まだまだ女性は少数だから大変でしょう」と問いかけられることが良くあります。しかし幸運なことに、私の場合は、今まで女性としての大変さを感じたことはほとんどなく、現在まで充実した研究生活を送ることが出来たと言えます。
このように、私が今まで仕事に魅力を感じ続けることが出来たのは、これまでの先輩女性研究者の方々に、すでに道を切り開いて頂いたおかげでもあることは、忘れてはいけない事実です。今後は、諸先輩方に築いて頂いた研究環境を、より良いものにして後輩に繋ぐことが私の使命です。そのためにも、これからも笑顔を絶やさず、生き生きと研究を続けられるよう、努力していきたいと思います。今後とも、ご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願いいたします。

 

日本化学会「化学と工業」第69巻第5号411ページ、CCIサロン「この人、紹介」より転載(写真は触媒化学融合研究センターで追加しました)

 

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