イベントレポート

第43回講演会 日本学術振興会 海外特別研究員 ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学 上野篤史 先生

講演会名 第43回講演会 日本学術振興会 海外特別研究員 ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学 上野篤史 先生
開催日 2017.03.24
開催場所 産総研第5事業所第2本館第4会議室(5-2-6603室)
参加人数 30名
概要

求核性分子による二酸化炭素捕捉と触媒的カルボキシル化反応

日本学術振興会 海外特別研究員 ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学
上野 篤史 先生

安価かつ無毒で、豊富に存在する炭素資源として、二酸化炭素を用いた化学品合成の研究が盛んに行われている。二酸化炭素分子は、カルボニル部位を2つ有するカルボニル系の化合物として捉えることが可能であり、古くから各種求核剤との反応による二酸化炭素の固定化反応が研究されてきたが、リチウム試薬に代表されるように、反応性の高い求核剤を用いた場合は官能基共存性に乏しく、応用範囲が狭まってしまうという欠点があった。そのため、より温和な条件下での固定化反応が検討されてきたが、二酸化炭素分子自身の反応性は低く、高収率の固定化には高温・高圧などの厳しい反応条件が必須になっている。そのような中、上野らは含窒素カルベン配位子を有する銅錯体(NHC-銅錯体)が、高効率・高選択的かつ温和な条件下での二酸化炭素の固定化反応に有用であることを見出し、アジリジン類、インドール類の直接的なカルボキシル化反応を報告した。本報告を端緒に、ベンズアミド骨格を有する化合物が、アルミニウム系アート錯体との反応により反応系中でC-H結合の直接的なメタル化を引き起こすことに着目し、NHC-銅錯体を活用した芳香族化合物、アリルエーテル類の効率的なカルボキシル化反応へと展開させた。また近年では、Frustrated Lewis Pairという双極性の分子を用いる気体分子の活性化法を活用した新たなアプローチにも取組み、その最先端の研究成果なども紹介した。

0324_上田図1