第105回講演会　東北大学 根東義則名誉教授、国際医療福祉大学 川端猛夫教授

◆有機超塩基触媒を用いる分子変換反応開発

東北大学大学院薬学研究科　根東義則名誉教授

根東先生による講演では、有機超強塩基触媒の研究を始めるに至った背景や、これを用いた先進的な分子変換反応の開発に関する研究成果が紹介された。金属塩基とは異なる反応性を示す反応が数多く見出され、大変興味深い内容であった。参加者からは、この有機超塩基が示す独特の反応性のメカニズムに関して多くの質問が寄せられた。研究者間の活発な意見交換は、この分野の将来の進展に向けて新たなアイデアを刺激するものとなった。

◆動的キラリティー及び動的分子認識に立脚した反応開発

国際医療福祉大学福岡薬学部　川端猛夫教授

川端先生からは大きく二本立てで、反応開発に関する研究をお話し頂いた。一つ目の動的キラリティについては、一見キラル化合物に見えない分子でも、単位時間内ではキラル分子として振る舞う化合物が存在し、不斉合成に利用可能であることを説明頂いた。豊富に存在するアミノ酸から直接異常アミノ酸へと変換可能であり、実用性も高い反応であった。新しい概念を創出し、その理論も体系的に研究された例を紹介頂き、基礎から応用につながる研究の真髄をお話し頂いた。二つ目は動的分子認識として、位置選択的反応の開発と、触媒的不斉反応の例をお示し頂いた。主にアシル化を題材とし、触媒による分子認識に基づく反応開発が、これまで困難とされた分子変換を実現する鍵となることをご教示頂いた。非常に独創性の高い研究内容に対して、多数の質問が寄せられ、活発な討論が行われた。