TEAM

現在医薬品や化成品の多くは、均一系金属触媒を用いたバッチ法により生産されています。しかし経済性や安全性の向上、環境負荷低減を今後さらに追求していくならば、金属触媒を回収・再利用できるよう不溶性の担体に固定し、これをより効率的なフロー反応系で利用する方法が今後の主流となるでしょう。その鍵を握るのが高性能な固定化触媒の開発です。
わたしたちは、豊田中研が開発したメソポーラス有機シリカ(PMO: Periodic Mesoporous Organosilica)をベースに、産総研が持つ分子触媒技術やケイ素化学技術を応用してより高性能で実用的な金属錯体触媒の固定化技術を確立し、環境にやさしいフロー法に基づく生産方式への転換を目指します。

稲垣 伸二(工学博士)

研究テーマ

  • PMOに適した触媒反応の選定
  • PMO構造安定性の向上
  • PMO製造の低コスト化

豊田中研クロスアポイント画像1

 

PMOに適した触媒反応の選定

現在PMOが適用できる金属錯体触媒・反応は一部に留まっています。PMOを有効活用するのに最適な触媒反応を選定し、その実用化に向けた課題に取り組みます。

PMO構造安定性の向上

PMOは共有結合の安定な骨格構造を有するため、金属触媒を直接固定するのに優れていますが、実用触媒として使用するには構造安定性を更に向上させる必要があります。構造が壊れる条件を特定し補強することで、安定性の向上を図ります。

PMO製造の低コスト化

PMOの金属錯体触媒固定化技術を実用化するうえで、製造の低コスト化は欠かせません。現在PMO製造に使用している高価な原料(有機ケイ素化合物)のより安価な製造法を検討します。

メンバー

  • 研究チーム長、
    産総研クロスアポイントメントフェロー(兼)株式会社豊田中央研究所 シニアフェロー

    稲垣 伸二

  • 触媒固定化設計チーム 研究チーム長

    崔 準哲

  • ケイ素化学チーム 研究チーム長

    中島 裕美子

  • フロー化学チーム 主任研究員

    小野澤 俊也

※後ろに「@aist.go.jp」を付けて下さい。

研究成果

PMOを利用した固定化触媒の論文

1) M. Waki, Y. Maegawa, K. Hara, Y. Goto, S. Shirai, Y. Yamada, N. Mizoshita, T. Tani, W.-J. Chun, S. Muratsugu, M. Tada, A. Fukuoka, and S. Inagaki, J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 4003.
2) Y. Maegawa and S. Inagaki, Dalton Trans. 2015, 44, 13007
3) N. Ishito, H. Kobayashi, K. Nakajima, Y. Maegawa, S. Inagaki, K. Hara, and A. Fukuoka, Chem. Eur. J. 2015, 21, 15564.
4) X. Liu, Y. Maegawa, Y. Goto, K. Hara and S. Inagaki, Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 7943.
5) Y. Kuramochi, M. Sekine, K. Kitamura, Y. Maegawa, Y. Goto, S. Shirai, S. Inagaki, H. Ishida, Chem. Eur. J. 2017 in press.