TEAM官能基変換チーム
物質が持つ様々な特性や機能は、その物質を構成する分子の骨格や官能基により発現します。それらの骨格や官能基を変換したり、新たな官能基を付加することにより、物質に新たな機能を与えたり、有用な化学品を合成することが可能になります。
当チームは、触媒技術を基盤とする(1) バイオマス原料からの材料開発、(2)小分子の化学変換(3)生分解性材料や高機能部材の開発(4)生体分子の化学アップグレード をテーマに、基礎的な反応の開発からそれを応用した機能性化学品の開発まで取り組んでいます。
研究チーム長
生長 幸之助 博士(薬学)
研究テーマ
- バイオマス原料からの材料開発
- 水素と二酸化炭素を利用した化学変換技術
- 生分解性材料の研究開発
- 官能基変換技術を応用した高機能部材開発
- 生体適合反応を応用した生体分子の化学アップグレード
バイオマス原料からの材料開発
各種廃棄物を含むバイオマスベースの原料を使って新たな材料開発を行っています。例えばセルロースや糖類などから合成したヒドロキシメチルフルフラール(HMF)等を使った新たな生分解性かつ耐熱性材料の合成や、最近では、リグニン由来や米ぬか由来の原料を使って、破断伸び率800%以上を誇る特異な材料の開発なども進めています。
参考文献
バイオマスベースの機能性ポリマーを開発
RSC Adv. 2020, 10, 36562-36570.
水素と二酸化炭素を利用した化学変換技術
主に水素と二酸化炭素を利用した化学変換技術を行っています。例えば、高圧下でも安定な触媒によってギ酸から100MPaの高圧水素と二酸化炭素を生成させ、高圧を利用した水素/二酸化炭素の分離技術を開発しています。更に得られた高圧水素を使って発電試験など応用技術への開発も手掛けています。加えて、同じく得られた高圧の二酸化炭素からはギ酸の再生だけでなく、エタノールやメトキシプロパノールなどを選択的に合成する触媒技術なども開発しています。
参考文献
ChemCatChem, 2015, 5, 886. (Front Cover, Cover Profile)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2021/CY/D1CY00149C
生分解性材料の研究開発
プラスチックの自然界への漏出による環境破壊、特に海洋汚染は深刻な社会問題となっています。天然の微生物ないし酵素により分解される、生分解性高分子材料への代替は、その解決策の一つです。我々は、独自の化学合成技術を駆使して、再生可能資源から機能性と生分解性を併せ持つ高分子材料の創出をめざしています。例えば、希有な生分解性ナイロンであるポリアミド4に着目し、両親媒性高分子の開発に成功しています。
参考文献
Eur. Polym. J. 2022, 163, 110961.
官能基変換技術を応用した高機能部材開発
官能基変換技術を応用して高機能部材である発光性金属錯体に関する研究を行っています。有機EL材料として知られているイリジウム錯体の効率の良い製造方法を開発し、社会実装に向けた検討を進めるとともに、新たな光触媒としての可能性も探っています。
関連特許:
JP6617966, WO2017221848, US10844086B, CN109328191B, EP3476856A4
生体適合反応を応用した生体分子の化学アップグレード
タンパク質に代表される生体分子は、生命系・自然界の機能を幅広く担っています。これに適切かつ精密な化学変換を施すことで、非天然型機能を示すハイブリッド化合物としての活用が期待できます。我々は、生体適合性の高い触媒系や反応化学の開発により実現される、生体分子のケミカルスペース拡張や機能向上に取り組んでいます。
参考文献
学術変革領域研究(B)「糖鎖ケミカルノックインが拓く膜動態制御」
J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 10798.
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 19844.
Bioconjugate Chem. 2023, 34, 781.
メンバー
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研究チーム長
生長 幸之助
mail:k.oisaki*
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上級主任研究員
川波 肇
mail:h-kawanami*
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主任研究員
今野 英雄
mail:h-konno*
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主任研究員
谷口 剛史
mail:tsu.taniguchi*
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主任研究員
小野 英明
mail:hideaki-ono*
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研究チーム付き(食薬資源工学OIL副ラボ長)
富永 健一
mail:k-tominaga*
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研究チーム付き(食薬資源工学OIL主任研究員)
佐々木 一憲
mail:sasaki-kazu*
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産総研特別研究員
Santra Dines
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テクニカルスタッフ
古川 由香
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テクニカルスタッフ
中野 眞人
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テクニカルスタッフ
中沢 美雪
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テクニカルスタッフ
小野瀬 悠佑
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派遣
宮崎 慶樹
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派遣
中尾 恭宏
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派遣
五十嵐 浩
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派遣
林 正弘
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派遣
寺内 淳一
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派遣
松澤 純
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派遣
松坂 里歩
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派遣
三浦 智恵子
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産学官制度来所者
藤村 光輝
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産学官制度来所者
李 日升
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産学官制度来所者
大野 聖海
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産学官制度来所者
澤原 馨登
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産学官制度来所者
Akid Ibrahim
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産学官制度来所者
佐藤 寛
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産学官制度来所者
獅子谷 卓
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産学官制度来所者
川崎 聖矢
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産学官制度来所者
高橋 敦輝
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産学官制度来所者
奥山 和紀
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産学官制度来所者
篠田 芽生樹
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産学官制度来所者
岡 明里
研究成果
プレスリリース
高圧水素源の「ギ酸」を二酸化炭素から再生(川波肇、2023/9/27)
低コストで廃棄物を抑えたペプチドの大量合成を実現(生長幸之助、2023/10/31)
フロー式によるギ酸からの発電システムの開発(川波肇、2023/10/20)
新しいリアルタイム分光分析法の開発(川波肇、2022/09/16)
医薬品の開発加速・合成コスト削減に貢献する複雑な光学異性体化合物を合成する新手法を開発(田中慎二、2022/10/12)
バイオマス由来の2種のプラスチックを組み合わせた新素材を開発-引き伸ばすほど強度が増す透明なフィルム素材-(田中慎二、2023/5/19)
メディア掲載・紹介
- 日本経済新聞朝刊 021ページ:「CO2からギ酸を直接合成」(川波 肇、2024/11/12)
- CO2からギ酸を直接合成、水素の運び手に 産総研 日本経済新聞(川波肇、2024/11/11)
- 水素とCO2をギ酸化 産総研・筑波大が新技術 日刊工業新聞動画(日刊工業新聞)fabcross for エンジニアマイナビニュースYahooニュースニュースイッチ(日刊工業新聞)(川波肇、2024/9/27)
- 日刊工業新聞:「不斉炭素 3つ並んだ化合物合成 産総研・名大が新技術 生物活性物質に提案」(田中慎二、2022/10/13)
- 科学新聞:「新しいリアルタイム分光法」(川波肇、2022/10/14)
- 日経クロステック:「産総研などが複雑な光学異性体化合物の新合成法、創薬研究加速へ」(田中慎二、2022/11/9)
- 科学新聞:「複雑な医薬品開発の迅速化期待 光学異性体化合物の新手法」(田中慎二、2022/11/11)
- 化学工業日報:「ギ酸からの水素生成 泡発生も即時測定 産総研」(川波肇、2022/11/14)
- 化学工業日報:「2つの触媒だけで異性体を作り分け 産総研―名大 創薬効率化に期待」(田中慎二、2022/11/14
- 坂田薫の『SCIENCE NEWS』(生長幸之助、2022/11/17)
- 日刊ケミカルニュース:産総研など光学異性体化合物を自在に合成できる新手法(田中慎二、2022/12/12)
- 産総研マガジン:2022年ノーベル化学賞「クリックケミストリー」とは(生長 幸之助、2023/1/25)
- fabcross for エンジニア:「バイオマス由来の2種のプラスチックを組み合わせた新しい素材を開発 産総研」(田中慎二、2023/5/22)
- ゴムタイムス(WEB):「産総研とJSTが共同開発 バイオマス由来プラスチック」(田中慎二、2023/5/24)
- 日経テックフォーサイト:「産総研、伸ばすと強度高まる生分解プラフィルムに」(田中慎二、2023/5/30)
- 日経クロステック:「引き伸ばすほど強度が向上、産総研らがバイオマス由来の生分解プラ」(田中慎二、2023/5/31)
- 日刊ケミカルニュース:「産総研 バイオマスコポリマーで高透明・高伸長フィルム」(田中慎二、2023/6/2)
- MONOist:「産総研がバイオマス由来の2種のプラスチックから透明なフィルムの新素材を開発」 (田中慎二、2023/6/7)
- 化学工業日報 「産総研 バイオプラで複合材 汎用並み強度 フィルム成形可能」(田中慎二、2023/8/23)
- 日刊工業新聞:「産総研など ペプチドブロックで合成 保護基抑え環境負荷小さく」(生長幸之助、2023/11/1)
- 引き伸ばすほど強度が増す新たなバイオプラ – MONOist (itmedia.co.jp)
- Chem-Station:「保護基の使用を最小限に抑えたペプチド伸長反応の開発」(生長幸之助、2023/12/8)
受賞・表彰
- 澤原馨登:2023年化学工学会第54回秋季大会 マイクロ化学プロセス分科会 学生講演賞 (2023/9/11-13)
- 澤原馨登: 2023年化学工学会第54回秋季大会 超臨界流体部会 学生講演賞(2023/9/11-13)
- 大野聖海: 2023年化学工学会第54回秋季大会 超臨界流体部会 学生講演賞(2023/9/11-13)
- 澤原馨登:第17回 水素若手研究会 優秀学生賞 (2023/8/23-24)
- 李日升:日本化学会 第102春季年会 学生講演賞(2022/3/23-26、オンライン開催)
- 澤原馨登:2023年度 笹川科学研究助成
- 澤原馨登:第12回JACI/GSCシンポジウム GSCポスター賞 (2023/6/13-14)
- 生長幸之助:化学コミュニケーション賞2023