イベントレポート

第112回講演会 東京工業大学 石川理史准教授、京都大学 寺村謙太郎教授

講演会名 第112回講演会 東京工業大学 石川理史准教授、京都大学 寺村謙太郎教授
開催日 2024.07.30
開催場所 産総研中央事業所5群 第4会議室(6603室)
参加人数 26名
概要

◆結晶性複合酸化物の局所構造で発現する触媒機能

東京工業大学科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所  石川理史 准教授

本講演では、アクリル酸類の合成、酸化反応、酸触媒反応など三種類の反応に対し、独自設計による複合金属酸化物固体触媒の開発成果が紹介された。これは、実用的触媒反応に用いられる固体触媒の表面構造と反応機構の解明を目的としたものである。いずれも準安定状態の結晶を基にした低温合成で固体触媒を作成し、構造制御されながら高活性を両立している。例えば、アクリル酸類合成用のM/Mo-V複合酸化物において、骨格内α-酸素の脱離と引き続く異種金属のドープが高活性の発現に寄与することが解析データと共に明瞭に示され、固体触媒による触媒作用がわかりやすく解説された。触媒反応の反応機構を含め基礎原理をおさえることで、さらなる実用的高活性触媒の開発が予感される講演となった。

◆H2Oを電子源とするCO2光還元~人工光合成への挑戦~

京都大学大学院工学研究科分子工学専攻 寺村謙太郎 教授

今回、光をインプットに用いてCO2を直接COへと還元可能な固体触媒プロセスについてご講演頂いた。まず、水素と熱による還元反応との比較から、水を電子源とする光からの直接的還元反応の有意性と、CO発生の科学的証明手段についての紹介がなされた。次いで具体的開発事例として、Ga2O3にAg粒子を活性点として担持した固体触媒から活性点をAg-Crコアシェル構造に改良することでCO選択性を飛躍的に高めた触媒、および、光による水分解反応に使用されるSrTiO3に異種金属をドープすることでCO発生効率を高めた触媒など数多くの固体触媒の開発成果が紹介された。更なる高効率CO生成触媒の開発が予感されると共に、人工光合成へ向けた高効率かつ信頼性高い研究開発成果が明解に説明された講演だった。