イベントレポート

触媒化学研究部門講演会

講演会名 触媒化学研究部門講演会
開催日 2025.05.22
開催場所 産総研中央事業所5群 第3会議室(6602室)
参加人数 21名
概要

Fueling the Future

Prof. Kuo-Wei Huang King Abdullah University of Science and Technology (KAUST)

現在のエネルギー状況と将来の安定したエネルギー供給に向けた選択肢について、Huang教授による講演が行われた。講演では、現在の化石燃料に依存したエネルギー消費が地球上の二酸化炭素濃度を280 ppmから400 ppm以上に上昇させており、このままの活動を継続すれば、1000 ppmを超える可能性があると指摘された。これにより、地球温暖化や海面上昇、海洋の酸性化といった環境問題に加え、人類の生存そのものが脅かされる事態に発展しかねない。

この深刻な課題に対し、化石資源からの脱却と、今後予測される世界的なエネルギー需要への対応が求められている。これには、低炭素なエネルギー生産と、それを支えるエネルギーキャリアシステムの導入が不可欠である。次世代のエネルギー供給源として水素が期待されているが、現在の水素ビジネスは非常に厳しい状況にあり、多くの企業が撤退している。その大きな理由の一つが、水素の運搬に関する技術的課題である。

こうした課題を解決する手段として、水素キャリアの利用が注目されている。水素キャリアとしては、MCH(メチルシクロヘキサン)やアンモニアなどが挙げられるが、Huang教授はギ酸が最も有効であると考えている。講演では、ギ酸を低炭素水素・エネルギーキャリア、さらにはe-Fuel(合成燃料)として活用するための研究と、今後の展望について紹介された。