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ケイ素化学チーム

ケイ素化学チームでは、有機ケイ素材料を高効率・高選択的に製造するための触媒技術開発を中心に取り組んでいます。特に、平成24年度より10年間の計画で開始された経済産業省未来開拓研究プロジェクト「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」の推進を中心に研究を進めています。本プロジェクトでは(1)砂を原料に効率的に有機ケイ素原料を製造する触媒技術の開発、(2)有機ケイ素原料から高機能材料を製造するための、高効率・高選択的触媒技術の開発、の2つの課題に取り組んでいます。当チームは、ケイ素以外のヘテロ元素反応化学やベースメタル触媒の開発にも取り組んでいます。
(最終更新日:2020.11.09 研究成果更新)

研究チーム長 中島 裕美子 博士 (工学)

研究テーマ

  • 高機能有機ケイ素材料のための触媒技術開発(主担当:中島・谷田部・永縄)
  • 固体DNP-NMRを活用する高活性触媒の開発(主担当:田中)
  • 遷移金属などさまざまな触媒を駆使した単純化合物の直截変換技術の開発(主担当:南・中島)
  • リン資源循環技術の開発(主担当:永縄・中島)

高機能有機ケイ素材料のための触媒技術開発

有機ケイ素材料は、高耐熱性、耐光性、光透過性等他の材料では代替できない多くの優れた特性を有しています。しかし、従来の製造法は構造制御性、選択性、コスト等において多くの問題を抱えています。これらを解決し、従来にない高性能材料を低コストで製造するための技術開発に取り組んでいます。

 

 

1)テトラアルコキシシランを原料とする有用ケイ素化合物の合成

 

最近、安価なケイ素原料として着目されているテトラアルコキシシランを原料として、ヒドロシランおよび有機ケイ素化合物の合成を可能とする触媒の開発に取り組んでいます。本課題は、強固なケイ素-酸素結合の切断を伴う極めて挑戦的な取り組みです。個の取り組みの中で、最近我々は安価で温和なNaBH4を還元剤として、アルコキシシランからヒドロシランを合成することに成功しました。本反応では、現行の工業プロセスに比べて、大幅なエネルギーの削減が可能となることが期待されます。

 

参考文献

Chem. Commun. 2019, 55, 5859-5862. (link)

 

 

 

 

 

2)高機能ヒドロシリル化触媒の開発

 

アルケン類のヒドロシリル化反応は有機ケイ素化合物を与える最も有用な炭素-ケイ素結合形成反応の一つです。ケイ素化学チームでは、「豊富で安価な卑金属の利用」「少ない触媒量でも高活性」「副反応を抑えた高選択性」「様々な官能基に対する許容性」などの優れた特徴を持つ新しいヒドロシリル化用金属錯体触媒の開発に取り組んでいます。こうした触媒開発を通じて、既存の有機ケイ素化合物合成プロセスの短行程化および新しい有機ケイ素化合物の開発と応用を目指します。

 

参考文献

Tetrahedron Lett. 2020, 61, 151513. (link)

Dalton Trans. 2019, 48, 5534-5540. (link)

Org. Lett. 2017, 20, 12-15. (link)

Chem. Commun. 2016, 52, 6723-6726. (link)

 

 

 

 

3)粘度-温度特性に優れた省エネ潤滑油の開発

 

 

ケイ素化合物の反応性(ヒドロシリル化)と分子構造の特性(シロキサン結合の柔軟性)に着目し、粘度-温度特性に優れた省エネ潤滑油の開発にも取り組んでいます。自動車業界では、CO2排出量を削減すべく燃費向上に取り組んでおり、潤滑油に対しては高い粘度指数(温度による粘度変化が小さいこと)が求められています。我々は、粘度指数が既存基油(炭化水素油、エステル油など:120~150)よりも格段に高い合成油(オリゴシロキサン油:220~290や280~350)を開発し、研究を進めています。

 

参考文献:

谷田部哲夫、トライボロジスト、Vol. 63、No. 5、332-337(2018)

 

 

 

 

4)クロロシランの触媒的分子変換技術の開発

 

 

ケイ素化学工業において安価に量産されているクロロシラン類を原料とし、新たに見出したニッケル触媒を用いることで、種々の有機基を持つクロロシランを効率よく選択的に合成することができます。例えば安価なアルケン類および有機アルミニウム化合物を有機基源として用いることが可能です。また、従来のクロロシランへの有機基の導入法である、高価で反応性の高い有機金属試薬を用いる反応と比較すると、本開発手法は温和な条件下で反応が進行し、ジまたはトリクロロシラン類に対して1つあるいは2つの有機基を選択的に導入することが可能になりました。得られた有機ケイ素化合物は、シリコーンやシランカップリング剤などの有用な有機ケイ素材料の合成中間体であり、これを利用した様々な材料への応用が期待されます。

 

参考文献:

[1] Org. Lett. 2018, 20, 2481-2484. (link)

[2] ChemCatChem 2019, 11, 3756-3759. (link)

 

 

 

 

 

固体DNP-NMRを活用する高活性触媒の開発

不均一系触媒は、均一系触媒に比べて一般的に実用性が高いものの、構造解析の手段が限られるために活性サイトの精密設計が困難です。均一系触媒開発の強力なツールであるNMRを不均一系触媒にも効果的に利用できれば、高い触媒活性と実用性を兼ね備えた究極の触媒を生み出すことも可能となります。しかし、固体NMRは感度および分解能が低く、触媒開発への適用は限られていました。我々は動的核分極 (Dynamic Nuclear Polarization) を利用するNMR (DNP-NMR)を駆使し、溶液NMRレベルでの精密構造解析を行うことで高活性な不均一系触媒の開発を進めています。

参考文献:

Shinji Tanaka, Wei-Chih Liao, Atsuko Ogawa, Kazuhiko Sato, Christophe Copéret, Phys. Chem. Chem. Phys. 2020, 22, 3184-3190. (link)

田中真司・佐藤一彦、高分子、Vol. 67、No. 6、336-340 (2018)

「合成化学者のための固体DNP-NMR」(Chem-Station掲載記事)(link)

 

 

 

遷移金属などさまざまな触媒を駆使した単純化合物の直截変換技術の開発

 

安定で簡単な構造からなる炭化水素、有機ケイ素化合物、有機硫黄化合物、また窒素化合物を有機反応によって簡便に変換する触媒技術の開発に取り組んでいます。こうして、いろいろな高付加価値化合物を創生することを目標としています。本技術は、廃棄物の再資源化、バイオマスの有効利用法につながるなど、限りある資源の有効利用をもたらすと期待されます。

 

 

 

 

リン資源循環技術の開発

 

リン資源は肥料などの農業利用から各種製造業分野に至るまで幅広く産業活用されています。このリン資源は、現在ほぼすべてを天然のリン鉱石に頼っているうえ、その循環サイクルには何万年も要することから、事実上再生不可能な天然資源とみなされています。我々は、回収再利用可能な2次リン資源として農業廃水などに含まれるリン酸化合物に注目し、これを高付加価値リン化合物へと変換するリン資源循環技術の開発に取り組んでいます。

 

 

 

 

人材募集

ポスドク募集
基礎から応用まで幅広く研究する産総研ケイ素化学チームで一緒に研究したい方、随時募集しています。

大学院生募集

当研究室では、リサーチアシスタント制度により、資金援助(例:修士 8万円/月、博士20万円/月)を受けながら、筑波大で学位(修士・博士)取得が可能です(連携大学院制度)。
筑波大学大学院数理物質科学研究科(化学専攻)を受験し、当研究室に配属され学位取得を目指します。見学等、随時受け付けています。中島までお問い合わせください。

 

制度の詳細等は下記のリンクをご参照ください。
筑波大学大学院数理物質科学研究科(筑波大学のサイト)
筑波大学連携大学院制度(筑波大学のサイト)
産総研 連携大学院制度
国費留学生制度(日本政府奨学金)について (筑波大学のサイト)
早期修了プログラム(社会人のための博士後期課程、筑波大学のサイト)

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メンバー

役職 氏名 メールアドレス
研究チーム長 中島 裕美子 (CV) yumiko-nakajima*
主任研究員 谷田部 哲夫 (CV) tetsuo-yatabe*
主任研究員 南 安規 (CV) yasu-minami*
主任研究員 永縄 友規 (CV) yuki.naganawa*
主任研究員 田中 真司 (CV) shinji-tanaka*
産総研特別研究員 猪股 航也
産総研特別研究員 Mathew Siby
テクニカルスタッフ Guo Haiqing
テクニカルスタッフ 小川 敦子
テクニカルスタッフ 佐藤 直人
テクニカルスタッフ 倉賀野 隆
リサーチアシスタント Gautam Monika
リサーチアシスタント Jheng Nai-Yuan
リサーチアシスタント Wang Tao
派遣研究員 坂本 圭
派遣研究員 藤田 玲
派遣研究員 宮本 仁美
派遣研究員 杉田 知子
派遣研究員 松山 奈央
派遣研究員 茅切 奈津子
派遣研究員 飯塚 公佑
派遣研究員 佐藤 潤一
招聘研究員 関口 章 (筑波大・名誉教授)
特定フェロー 真島 和志 (阪大基礎工・教授)

*後ろに@aist.go.jpを付けて下さい。

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研究成果

*原著論文*

 

2020年

“Palladium/carboxylic acid‐catalyzed Alkenylation of Furfural and its Derivatives Using Alkynes”

*Minami, Y.; Miyamoto, H.; *Nakajima, Y.

ChemCatChem 2020, 12, in press (link)

 

“Selective C-P(O) Bond Cleavage of Organophosphine Oxides by Sodium”

Zhang, J.-Q.; Ikawa, E.; Fujino, H.; Naganawa, Y.; Nakajima, Y.; *Han, L.-B.

J. Org. Chem. 2020, 85, 14166–14173. (link)

 

“Co(I) complexes with a tetradentate phenanthroline-based PNNP ligand as a potent new metal-ligand cooperation platform”

Jheng, N.-Y.; Ishizaka, Y.; Naganawa, Y.; Sekiguchi, A.; *Nakajima, Y.

Dalton Trans. 2020, 49, 14592-14597. (link)

 

“Catalytic Decarboxylation of Silyl Alkynoates to Alkynylsilanes”

Kawatsu, T.; Aoyagi, K.; Nakajima, Y.; Choi, J.-C.; Sato, K.; *Matsumoto, K.

Organometallics 2020, 39, 2947-2950. (link)

 

DNP NMR spectroscopy of cross-linked organic polymers: rational guidelines towards optimal sample preparation

*Tanaka, S.; Liao, W.-C.; Ogawa, A.; Sato, K.; *Copéret, C.

Phys. Chem. Chem. Phys. 2020, 22, 3184–3190. (link) [Selected as Back Cover Picture]

 

Polypropylene-Based Nanocomposite with Enhanced Aging Stability by Surface Grafting of Silica Nanofiller with a Silane Coupling Agent Containing an Antioxidant

*Watanabe, R.; Sugahara, A.; Hagihara, H.; Sakamoto, K.; Nakajima. Y.; *Naganawa, Y.

ACS Omega 2020, 5, 12431–12439. (link)

 

Oxidative Addition of C–X Bonds and H–H Activation Using PNNP-Iron Complexes

Gautam, M.; Yatabe, T.; Tanaka, S.; Sato, N.; Takeshita, T.; Yamaguchi, K; *Nakajima. Y.

ChemistrySelect 2020, 5, 15-17. (link)

 

2019年

Ruthenium-Catalyzed Selective Hydrosilylation Reaction of Allyl-functionalized PEG derivatives

Inomata, K.; Naganawa, Y.; Guo, H.; Sato, K.; *Nakajima, Y.

Tetrahedron Lett. 2019, 60, 151086. (link)

 

Nickel-Catalyzed Selective Cross-Coupling of Chlorosilanes with Organoaluminium Reagents

*Naganawa, Y.; Guo, H.; Sakamoto, K.; *Nakajima, Y.

ChemCatChem 2019, 11, 3756-3759. (link) [Selected as Cover Picture]

 

Synthesis of Hydrosilanes via Lewis-Base-Catalysed Reduction of Alkoxy Silanes with NaBH4

Aoyagi, K.; Ohmori, Y.; Inomata, K.; Matsumoto, K.; Shimada, S.; Sato, K., *Nakajima, Y.

Chem. Commun. 2019, 55, 5859-5862. (link) [Selected as Inside Cover Picture]

 

Heterogenous Hydrosilylation Reaction Catalysed by Platinum Complexes Immobilized on Bipyridine-Periodic Mesoporous Organosilicas

Naganawa, Y.; Maegawa, Y.; Guo, H.; Gholap, S. S.; Tanaka, S.; Sato, K.; *Inagaki, S.; *Nakajima, Y.

Dalton Trans. 2019, 48, 5534-5540. (link)  [Selected as Inside Cover Picture]

 

Synthesis and Characterization of Silyl-Bridged Dinuclear Cobalt Complexes Supported by an N-heterocyclic Carbene

Ishizaka, Y.; *Nakajima, Y.

Organometallics 2019, 38, 888-893. (link)

 

Deprotonation of a PNNP-Iron Complex: Expanding the Concept of Metal-Ligand Cooperation to the PNNP-Iron System

Takeshita, T.; *Nakajima, Y.

Chem. Lett. 2019, 48, 364-366. (link)

 

Epoxide as precatalyst for metal-free catalytic transesterification

*Tanaka, S.; Nakashima, T.; Satou, N.; Oono, H.; Kon, Y.; Tamura M.; Sato, K.

Tetrahedron Lett. 2019, 60, 2009-2013. (link)

 

2018年

Catalytic Reduction of Alkoxysilanes with Borane Using a Metallocene-Type Yttrium Complex

Aoyagi, K.; Matsumoto, K.; Shimada, S.; Sato, K.; *Nakajima, Y.

Organometallics, 2018, 38, 210-212. (link)

 

Selective Hydrosiloxane Synthesis via Dehydrogenative Coupling of Silanols with Hydrosilanes Catalysed by Fe Complex Bearing a Tetradentate PNNP Ligand

Takeshita, T; Sato, K; *Nakajima, Y.

Dalton Trans. 2018, 47, 17004-17010. (link)

 

Direct Silyl-Heck Reaction of Chlorosilanes

Matsumoto, K.; Huang, J.; Naganawa, Y.; Guo, H.; Beppu, T.; Sato, K.; *Shimada, S.; *Nakajima, Y.

Org. Lett. 2018, 20, 2481-2484. (link)

 

One-Pot Sequence-Controlled Synthesis of Oligosiloxanes

*Matsumoto, K.; Oba, Y.; Nakajima, Y.; *Shimada, S.; *Sato, K.

Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 4637-4641. (link) [Selected as Cover Picture]

 

Hydrosilane Synthesis via Catalytic Hydrogenolysis of Halosilanes Using a Metal-Ligand Bifunctional Iridium Catalyst

Beppu, T.; Sakamoto, K.; *Nakajima,Y.; Matsumoto, K.; Sato, K.; *Shimada, S.

J. Organomet. Chem. 2018, 869, 75-80. (link)

 

2017年

Iridium-Catalyzed Hydrosilylation of Sulfur-Containing Olefins

Srinivas, V.; *Nakajima, Y.; Sato, K.; *Shimada, S.

Org. Lett. 2017, 20, 12-15. (link)

 

Nitrile Hydroboration Reactions Catalyzed by Simple Nickel Salts, Bis(acetylacetonato)nickel(II) and Its Derivatives

Nakamura, G.; *Nakajima, Y.; Matsumoto, K.; Srinivas, V.; *Shimada, S.

Catal. Sci. Technol., 2017, 7, 3196-3199. (link) [Selected as Cover Picture]

 

Synthesis and Structure of Metallocene-Type Ti(III) Complexes, and Their Catalytic Activity Towards Olefin Hydrosilylation Reactions

Eguchi, K.; Aoyagi, K.; *Nakajima, Y.; Ando, W.; Sato, K.; *Shimada, S.

Chem. Lett. 2017, 46, 1262-1264. (link)

 

Tris(pentafluorophenyl)borane-Catalyzed Reactions of Siloxanes: A Combined Experimental and Computational Study

Eguchi, K.; Nakajima, Y.; Sato, K.; *Shimada, S.; *Choe, Y.-K.

Eur. J. Org. Chem. 2017, 4922-4927. (link)

 

*総説・著書・解説など*

Hydrosilylation Reaction of Functionalized Alkenes

Naganawa, Y.; Inomata, K.; Sato, K.; *Nakajima, Y.

Tetrahedron Lett. 2020, 61, 151513. (link)

 

クロスカップリング反応の有機ケイ素への新展開―ハロシランの酸化的付加を鍵とする触媒的分子変換

永縄友規、中島裕美子

化学 2018, 73, 72-73.

 

ヒドロシリル化触媒開発の最前線

中島裕美子

塗装工学 2018, 53, 1-7.

〒305-8565 茨城県つくば市東1-1-1 中央第5
電話・FAX 029-861-6052

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